監獄学園にやってきたクズな大罪人は、男ぎらいな次席看守さまを落としたい。


 なんで108番が私の好きなタイプを知ってるの?

 きょとんとしてその顔を見上げれば、108番は小首を(かし)げて笑う。


 え、どこかで聞かれた…!?


 気味がわるくて、一歩下がりながら108番をじとっと見ると、視界のはしに黒いものが映った。

 壁にくっついた汚れかな、と思って視線を向けたことを、すぐに後悔する。




「きゃぁぁぁぁぁぁあっ!!」


「うわっ、なんだ?」


「クモ!クモ!クモーっ!」


「はぁ?…あぁ、そこの壁にいるな」


「やだやだやだやだやだっ!」




 生理的な涙がにじんできて、ずりずりうしろに下がってクモから距離を取った。

 カランとほうきがたおれる。

 かかとに段ボール箱があたると、そういえばこっちにはクモの巣があるんだった、と思い出して。




「いやーっ!」


「落ちつけって、景依!」
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