キミの正体 ~実は独占したがり超絶オオカミでした~
「あの……」

「?」

「名前で……呼びたいんですが」

「…っ!?」

「だめ……ですか?」

おそるおそるされた要求の内容があまりに可愛くて面食らう。

「うっ、ううん!? 別に…っ、いいよ? 呼びたいように……」

「じゃあ​────」

朝日を遮るように影が落とされる。

びっくりするくらい優しい目つきで私の頬を撫でた葵くん。

絡み合う視線の中、静かにキスを交わして呟いた。

「玲乃…」

「…っ、」

やっ、やめて、と思わず叫びたくなる。

そんな可愛い顔で口に出すもんじゃないから…

騒ぎ出した胸は一向に収まらず、加速する一方。

「もう…、僕以外に触らせんなよ。触らせたら怒るからな」

ふふっ……、

なんだ……。

そっちも余裕ないんだ……っ。

さっきまでの表情とは一変。

少し赤面しながらそんなことを言った葵くんに私は小さく笑みをこぼす。

「なっ、なんだよ…」

きっとこの先も、もっと……

「ふふっ、別にー?」

私はこの腕の中に囚われの身で…、

今よりもっと深い沼の中に……、





落ちていっちゃうんだと思う​───────。

【終】
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