【シナリオ】御曹司には興味がない〜スマホ依存症の私に執着しないで〜

第十章 社内表彰

〇社内大会議室

 月に一度、全体集会が開かれる。
 そして、年に二度、集会の時に表彰式があるのだ。誰が表彰されるかは、部長クラス以上しか知らず、毎回社員全員が注目だ。

 蓼科の司会で集会が始まり、社長の挨拶などがあり一通り終わった。

 蓼科「次に、表彰式を行います。名前を呼ばれた方は、前へお越しください」

 式の間も、一番後方の目立たないところで、自分は関係ないとばかりにスマホを見ている紗菜。

 蓼科「営業部田中さん、水野さん。開発部徳永さん」

 田中と徳永は、選ばれたことに笑顔で前へと出てきた。営業部には、水野は紗菜しかいないのだが、スマホに気を取られていて、他の部署の水野さんだと勝手に思い込んでいた。周囲は、現れない一人にざわつきだす。

 後輩女性「紗菜さん、水野さんって呼ばれたの、紗菜さんじゃないですか?」
 紗菜「へ⁇ そんな訳ないでしょう。他の部署の人だよ」
 
 あり得ないとばかりに笑っていたのだが……。

 蓼科「営業部の水野紗菜さん。前へお願いします」
 紗菜「……。ええ⁉ 私⁇」

 全社員の注目を集める中、下を向いて縮こまりながら前へ出る。賞状を読み上げられ渡されるも、実感もなければ、目立ちたくもない紗菜には、苦痛でしかなかった。

〇集会解散後の大会議室

 翠、蓼科、表彰された三人がその場に残っている。

 蓼科「これからも、社のために頑張って下さいね」
 田中・水野・徳永「はい」
 蓼科「恒例の表彰者との食事会は、本日の夜に予定しています。18時にエントランスへ集まって下さい」
 田中・徳永「はい」
 紗菜「ええ⁉」

 田中と徳永は、光栄とばかりに返事をしたが、紗菜だけは初めて聞く食事会に嫌そうな返事だ。

 翠「水野さん、なにかご不満でも?」
 紗菜「え⁉ いえ、あの。欠席の選択肢は?」
 翠「プハッ、そんなこと言うやつ今までいなかった。別に欠席でもいいが、後日俺と二人で食事へ行くか?」
 紗菜「はい⁇ 何としても、今日出席させていただきます」
 翠「そうか? それは残念だな」

 楽しそうに笑っている翠と断ろうとした紗菜に、蓼科は笑いを堪えている。田中と徳永は怖いもの知らずなのかと、紗菜の態度に驚きが隠せない。

〇営業部

 会議室から戻った紗菜は、表彰されたにも関わらず不機嫌だ。

 後輩女性「紗菜さん、凄いですね!」
 紗菜「嬉しくない……」
 後輩女性「何でですか? 女性でもらってる人、初めて見ましたよ」
 紗菜「目立ちたくないの」
 後輩女性「確かに。みんなが紗菜さんのこと、話題にしていました」
 紗菜「最悪……」

 会議室から出て、ぞろぞろと部署へ戻る間も、話題は紗菜のことだったのだ。

 それよりも、翠にロックオンされている心配をした方がいいなど、紗菜はこの時点では全く知らない。



 
 
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