【シナリオ】御曹司には興味がない〜スマホ依存症の私に執着しないで〜

第十三章 逃亡

〇翠のマンションの寝室

　紗菜「ふぁ～、よく寝た～。んん？」

　目を開けると知らない天井で、とてつもなく寝心地のいいベッドにいた。この状況が、全く理解できない。ふと、横へ顔を向けると、フワフワの髪だけが見えた。

　紗菜(誰⁉　ここはどこ⁇　服は？)

　声に出さないように、一つずつ疑問を解いていく。服は、昨日着ていたワンピースのままで、上に羽織っていたカーディガンだけ、脱いでいる。昨夜の食事会を思い出し、こんな豪華な部屋に住んでいる人は一人しか思い当たらない。

　紗菜(スマホ‼　スマホはどこ？)

　昨夜の仕事終わりから、ろくに触れないまま朝になってしまった。この状況でも、一番気になるのはスマホなのだ。隣で眠る男性を起こさないように、そっとベッドから出て荷物を探すも、この部屋にはカーディガンしかなかった。扉を開けて寝室を出ると、驚くほど広いリビングだった。ソファの上に、紗菜の荷物が置いてある。鞄からスマホを取り出し見ると、時間は朝の六時だ。

　スマホの画面の上には、驚くほどの通知が来てたた。全てを確認したいが、ここを出る方が先だと我慢する。まだ平日の今日は、出勤んしなくてはならない。

　紗菜は、荷物を持って、そっとマンションを後にした。

〇翠のマンションの寝室(紗菜が帰った後)

　翠「はあ〜、あれ？」

　隣に寝ていたはずの紗菜の姿がない。

　翠「逃げられた……」

　逃げられると余計に追いたくなるもので、早速仕事終わりに捕まえようと企む。もう、逃がさない。

　そんな翠の思惑を、紗菜は知らずに出勤する。

〇営業部

　紗菜が表彰されたことは、翌日になっても話題の種だ。誰もが認めてはいるが、羨む気持ちが向けられる。

　後輩女性「紗菜さん、お食事会どうでした？」
　紗菜「へ⁉」
　後輩女性「超高級料亭に連れて行ってもらえるって聞いたことがあるから、紗菜さんに話を聞くのを楽しみにしてたんです」
　紗菜「詳しいね」

　どこへ連れて行かれるかもわからないまま、翠の車に乗せられた紗菜とは大違いだ。

　後輩女性「どうでしたか？」
　紗菜「美味しかったよ(味覚えてないけど……)。さあ、仕事仕事」

　この話題を、強引に終わらせて仕事へ集中する。

　紗菜は、営業部へ訪れる人からの視線を一日中感じて、うんざりするのだった。