【シナリオ】御曹司には興味がない〜スマホ依存症の私に執着しないで〜

第三章 困惑の営業部

◯営業部

 いつもと変わらない朝。現地調査の報告書を、紗菜は一心不乱に纏めている。集中すると周りの音が聞こえなくなるのだ。

 突然、フロアに社長が現れて、営業部が一気にざわつき出す。紗菜だけが、仕事に集中していて気づいていない。

 営業部部長「しゃ、社長! どうされたんですか?」
 翠「社内視察だ」
 蓼科「私たちのことは、お気になさらず。仕事を続けて下さい」
 営業部部長「……」

 そうは言われても、部長をはじめ部内は落ち着かない。

 二人は、メガネをかけて地味な女性が、物凄い速さでパソコンを打ち込んでいるのを目にした。思わず目が釘付けになる。その女性は翠達の視線には、全く気づいていない。
 
 営業部男性「水野さん、水野さん!」
 紗菜「へ!? 何でしょう?」

 同僚の男性が何度か呼びかけて、やっと気づいた紗菜は、驚いた声を上げて返事している。そこで、翠と蓼科が、その女性が自分達の目的の人物だと知る。

 翠は、予想外に地味な女性だったことに、驚き目を見開く。蓼科も、笑いを堪えている。翠は、本当にこの女性と結婚するつもりなのだろうかと、可笑しさが込み上げる。

 ただ、営業部の男性と話をしている紗菜は、聞かれたことに的確に答えていて、間違いなく書類の作成者であることは確信できた。

 ここへ来た収穫はあったが、あとは翠次第。

 満足した翠と蓼科は、営業部を後にする。

 翠達の去った後の営業部。

 後輩女性「紗菜さん、紗菜さん」
 紗菜「ん? どうしたの?」
 後輩女性「なんでそんなに落ち着いてるんですか!?」
 紗菜「いやいや、何があったか知らないけど落ち着いたら?」
 後輩女性「落ち着いてなんて、いられません! 朝から、社長を見られるなんて!」
 紗菜「社長?」
 後輩女性「今、このフロアへ来てたじゃないですか!」
 紗菜「そうなの? 全く気づかなかった」
 後輩女性「……」

 確かに、いつも集中している時の紗菜は、周囲のことは目に入らないが、あれだけフロアがザワついていたのに、それすら気づかないなんて……。
 せっかく、イケメン社長を見た話題で盛り上がりたかったのに、ガッカリするのだった。

 紗菜が、フロアを見渡すと、確かにフロアがいつもより落ち着きがない。紗菜は、まあ私には関係ないとばかりに、仕事を再開するのだった。
< 3 / 15 >

この作品をシェア

pagetop