【シナリオ】御曹司には興味がない〜スマホ依存症の私に執着しないで〜

第四章 面白い女

〇社長室

　翠と蓼科は、社長に戻ってお互い顔を見合わせた途端に、我慢していた笑いを吐き出す。

　翠「プハッ、あの女、面白すぎるんだけど！」
　蓼科「まあ、書類を見た限りでも、凄く真面目な女性なのだと予想していましたけど、プッ」
　翠「あの、タイピング速度ヤバいだろ！」
　蓼科「そこ？」
　翠「お前は何のことを言ってるんだ？」
　蓼科「いや、今までお前の周りにいた女性と、あまりにもタイプが違いすぎて……」
　翠「まあ、想像以上に地味であることは間違いない」
　蓼科「結婚するとまで言ってたけど、実際見てどうだった？」
　翠「気に入った‼　まだ、誰にも手を付けられていない、真っ新の女を俺色に染めると思うと、ゾクゾクしないか？」
　蓼科「……。お前に、一方的に気に入られた水野さんが、気の毒になってきた」
　翠「失礼だな。人を見た目で判断しない俺を、誉めてほしいくらいだよ」
　蓼科「……」

　蓼科は、営業部で見た紗菜の姿を思い出し、翠に気に入られたことを気の毒に思う。絶対に、翠のようなグイグイくる俺様は、苦手なはずだ。きっと、関わりたくないと思うのだ。

　朝から営業部へ顔を出していたが、暇な訳ではない。社長の翠の元へは、次から次へと案件が回って来る。

　蓼科「そういえば、最近人気の不動産サイトを知ってますか？」
　翠「人気のサイト？」
　蓼科「若い女性の、初めての一人暮らしに、的確な助言をしてくれるサイトがあるらしいです」
　翠「どうして、そんな限られた人相手のサイトが人気なんだ？」
　蓼科「一人暮らしを始める女性にとって、住む場所やセキュリティなど、気になるところはたくさんありますよね？　男性の一人暮らしより、住居選びに悩みが多いんです」
　翠「まあ、確かに、気になるところは多いだろうな」
　蓼科「そんな女性に、的確にアドバイスしてくれるサイトがあるんです。実際に相談した人だけではなく、サイトを見た人からも、賞賛の声が上がり、拡散されているんです」
　翠「何ていうサイトだ？」
　蓼科「『不安を解決ホームアドバイザーナサ』っていうサイトです」
　翠「ナサ？」
　蓼科「はい、何か気になることでも？」
　翠「いや、見てみる」

　翠は、早速サイトを開き見ている。そこには、若い女性が好みそうな可愛らしいサイトがあり、一見不動産関係のサイトには見えない。ところが、実際相談を見てみると、面白いのだ。
　駅からの距離、間取り、階数、家賃など書ける範囲での相談だが、そこへ入れられているコメントに釘付けになる。
　
　駅から遠い上に道が暗い、近所のゴミのマナーが悪いなど、実際現地を見ないとわからないことまで書いているのだ。

　無料の相談サイトで、運営者には利益がないはずなのに、親身な助言に人気なのも頷ける。

　翠「運営者は誰かわからないのか」
　蓼科「はい。ネットでも話題になっています」

　不動産会社を経営している翠にとっても、気になるサイトだ。