【シナリオ】御曹司には興味がない〜スマホ依存症の私に執着しないで〜

第八章 彼女の素顔

〇外出先へ向かう車の中

 翠「見たか?」
 蓼科「水野さんの素顔のことですか?」
 翠「それ以外ないだろう」
 蓼科「容姿以外、完璧な女性だと思っていましたが、容姿も完璧に翠好みで驚きました」
 翠「俺も、容姿は関係なく惚れたが、容姿までドンピシャだった」
 蓼科「それで? これから、どうするんですか?」
 翠「どう攻めるかな」
 蓼科「彼女、どこまでも逃げそうな雰囲気ですね」
 翠「絶対に逃がさない」
 蓼科「もう一つ気になることが……」
 翠「なんだ?」
 蓼科「さっき、水野さんのスマホを拾った時に、偶然見てしまったのですが……」
 翠「何なんだ? 気になるだろう?」
 蓼科「例のサイトの管理者かもしれないです」
 翠「はああ⁉ どういうことだ?」
 蓼科「一瞬でしたが、管理者のページだった気がするんです」
 翠「ナサ……。紗菜‼ 最高じゃないか‼」

 翠の頭の中は、これから向かう取引先のことは抜け去り、もう紗菜一色なのだ。

〇外出先から営業部へ戻った

 いつもテキパキしている紗菜からは考えられない、ボーッとした様子で営業部へ戻る。

 後輩女性「おかえりなさい。紗菜さん、どうかされましたか?」
 紗菜「やってしまった……」
 後輩女性「へ⁉ 何を?」

 紗菜らしくない言葉が紡がれ、心配になる。

 紗菜「エントランスで」
 後輩女性「エントランス? このビルの一階の?」
 紗菜「そう」
 後輩女性「何かあったんですか?」
 紗菜「余所見していて、社長にぶつかっちゃったの!」
 後輩女性「ええ⁉⁉」
 
 驚くのも無理はない。見ている分にはいいが、実際は冷たく近寄れないイメージなのだ。

 紗菜「メガネが飛んで行って、最初相手が誰かわからなかったの。失礼なことしてないといいけど」
 後輩女性「メガネが飛んで行ったってことは、素顔を見られたってことですか⁇ 私でも、数回しか見たことないのに」
 
 紗菜の悩みとは関係ない所で嘆いている。

 紗菜「もう過ぎたことだし、くよくよしても仕方ないか! なんか、聞いてもらったらスッキリした‼」

 見られてしまったものはしょうがないし、特に何もないだろうと忘れることにした。

 後輩女性「紗菜さんの素顔を見て、反応しない男性なんていないんじゃないですか?」
 紗菜「何それ。そんなことあるはずがないでしょう?」
 後輩女性「……」

 営業部内で、紗菜の素顔を見たことがある唯一の後輩は、無自覚な紗菜を守るために、今日まで秘密にしていた。後輩女性は、内心で思っていた。絶対に社長に、ロックオンされてしまったと……


< 8 / 15 >

この作品をシェア

pagetop