ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜
「な、なんでまた泣くんだよ……!? 僕、何かした?」
「う、うっさい……! 見んなバカ……!」
私は咄嗟に顔を背けて涙を隠す。
クリムに負けて悔しい。
という気持ちより、自分はいったい何をしているのだという惨めさが涙を出させていた。
あんな劣悪なアトリエで三年間を棒に振って、それどころか錬成師としての道も閉ざされそうになっていて。
自分はどこで間違えてしまったのだろう。どうするのが正解だったのだろう。
そもそも私は、錬成師に向いていなかったのだろうか。
『さっさと失せろ、この才能なしが』
目の前に宮廷錬成師となった幼馴染が現れて、自分の才能を否定された気持ちになってしまった。
加えてババロアからの悪態も思い出してしまい、心がぐちゃぐちゃになって涙が止まらなかった。
どれくらいそうしていただろう。
それなりの時間、クリムから顔を逸らして泣き続けていたが、彼はその間何も言わずに待っていてくれた。
やがてこちらの気持ちが落ち着いてくると、それを見計らって気遣うような言葉を掛けてくれる。
「……何か、あったのか?」
「……」
クリムに心配なんてされたくないと思った。
でも、今の私はその一言だけで、すごく救われたような気持ちになった。
ババロアのアトリエを追い出されて、他のどのアトリエからも拒まれるようになって。
自分が本当に、誰にも必要とされていない、誰の目にも留まらない存在のように感じていたから。
ここまで惨めな姿を見せた手前、変に隠す理由もない。
私は溜まっていた鬱憤を晴らすように、クリムにすべてを打ち明けることにした。
劣悪な環境のアトリエにいたこと、そこを無慈悲にも追い出されたこと、そのせいでどこのアトリエも雇ってくれなくなってしまったことを。