ブラックアトリエから不当に解雇されたけど、宮廷錬成師になっていた幼馴染と再会して拾われました〜実は隠されていたレアスキルで最高品質の素材を集めていたのは私だったようです〜
クリムの碧眼が僅かに見開かれる。
私としても直接的すぎる問いかけかと思ってしまったけれど、聞かずにはいられなかった。
「私のこと、嫌いなんじゃないの? 憎いんじゃないの? なのになんで、私に優しくしようとするの……?」
脳裏に幼き日の光景が蘇る。
お母さんのお墓の前で、クリムと大喧嘩した時の光景が。
あの時に私は、クリムが私のことを心底嫌っていると確信した。
昔、私とクリムはよく二人きりで一緒に遊んでいた。
特別な理由はなく、家が近所で同い年の子だったから、遊び相手にちょうどよかったのだ。
しかし六歳くらいになると、次第にクリムは他の男の子たちに遊びに誘われるようになった。
それでも彼は、私が独りぼっちになることを危惧してか、私との遊びを優先してくれた。
それがとても嬉しくて、もしかしたら私はあの時クリムのことを異性としても意識し出していたのかもしれない。
けれど、八歳になったある日のこと。
クリムと二人で遊んでいる時に、村の男の子たちに囲まれたことがあった。
そのくらいの年齢の子たちは、異性と遊ぶことを異端視する傾向があり、加えてクリムは彼らからの誘いを何度も断っていたため執拗に揶揄われてしまった。
『お前そいつのことが好きなんだろ』
『だから俺たちよりもそいつを優先してたんだろ?』
この時の私は、悪い意味ではなくいい意味でドキドキしながら話を聞いていた。
こんな状況ながらも、クリムがいったいどう答えてくれるのか、私はすごく気になったから。
だからこそ、その後にクリムが放った一言が、今でも脳裏によぎることがある。
『好きなわけないだろ、こんな奴』
揶揄ってくる子たちを追い払うための方便。そうだとは思った。
しかし私はその一言に、かなりのショックを受けてしまった。
その後、それでも村の子たちがしつこく揶揄ってきたので、クリムはとうとう手を出してしまった。
それからクリムは、村の子たちに遊びに誘われることがなくなってしまった。