Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
「えっ、ど、どうして?」

 瑠維に背中を向けていることで表情を見られずに済んだため、少しだけ安心した。

 だが春香の体の強張り方から、それが事実であることが簡単に瑠維に伝わってしまう。

「やっぱりそうだったんですね。夕方に鮎川さんが再びやってきて、ケーキとシャンパンを置いて行ったんです。意味がわからなかったんですが、春香さんの勤め先の袋を持っていたので、もしかしたらと思いましてーー案の定ですか」

 店の袋! 瑠維の観察眼に感心しながらも、鮎川に口止めされた内容を思い出す。そのことには触れないように話をしなければーー春香は必死になって言い訳を考え始めた。

「あのね、アイシャドウを探していたみたいで、たまたま私に気付いて声をかけてくれてね、その時に『Love is blind』のラストには、読者それぞれがその後の考え方が違うって教えてくれたの」
「……そうですね。敢えて含みを持たせた終わり方をさせましたから」

 腰に回された瑠維の手の力が僅かに強くなったような気がした。

「春香さんとの再会がないのなら、僕は死んだも同然でーーあのラストはそういう意味でした。あなたと再び繋がる未来があるなんて想像出来なかったんです」
「どうして?」
「もし再会したとしても、春香さんに別の恋人がいれば僕にはあなたの視界に入る余地はなかったでしょう。あの作品はあなたへの抑えきれない想いを吐き出したラブレターのようなもので、決別の意味もあったーーでも読者の方はそうではなかったんです」

 春香は鮎川から聞いた言葉を思い出す。

「みんな初夏と伶が再会して恋に落ちることを願っていた……?」
「えぇ、驚きました。しかも初夏にモデルがいることまで知られていて。そんなことを話した覚えはないんですけどね」

 小さく笑った瑠維の息が首に吹きかかり、春香の体が微かに震えた。
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