Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
「逃げるための家の工事が始まった途端に春香さんと再会して、あなたは変わらず素敵で、夢でしか見たことのない関係になれて……すごく嬉しいのに、複雑な心境も隠せなくてーー」

 それは瑠維くんが私と離れたくないって捉えてもいいの? そう聞きたかったけど、逆に自分との関係が足枷になっているのだとしたら悲しくなる。

 すると瑠維は春香の体に腕を回し、ぎゅっと抱きしめた。

「春香さんと一緒に暮らし始めて、こんなに満たされた時間があるなんて初めて知りました。だけど自分の都合にあなたを巻き込むわけにはいかないですからーーだから決めたんです。工事は終わるけど、しばらく引っ越しはしません」
「……ん?」

 思っていた答えと違っていたため、春香は瑠維の顔を見上げて首を傾げる。

「どういうこと?」
「春香さんの勤務地が決まったら、二人でそこで一緒に暮らしませんか?」
「で、でも……家はどうするの?」
「あの辺りは別荘として使う方も多いそうなので、休みの日にあちらで過ごすのもいいと思うんです。今のところ、僕はどこに住んでいても出来る仕事なので」
「でも……んっ……!」

 唇を塞がれ、その先の言葉が続かなくなる。しかも瑠維は春香の唇をすぐには解放せず、味わうようにキスを続けた。

「……僕があなたから離れたくないんです。そばにいさせてください」
「私だってそばにいたいよ……でも……」
「"でも"はいりません。じゃあ決まりですね」

 瑠維は満足気にそういったが、春香としては自分の勤務地に彼を同行させることに、やや抵抗があった。

 だからと言って、自分が全く知らない土地に行くことも少し不安が残る。

 この間まではこの場所に残ることの方が不安で、違う場所で心機一転、新しい生活を始めるのもいいと思っていた。しかしいざ現実感が増すと、どちらも不安になってしまう。

 今の春香には、どの選択肢が自分にとって最良の選択なのかがわからない。

 それでも瑠維の決心は固く見えたので、春香はそれ以上は何も言うことはなかった。
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