Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
* * * *

 電話を切ってから十五分ほどが経った頃、店の自動ドアが開いて瑠維が入ってきた。春香の姿を見つけると、一目散に駆け寄ってくる。

 昨日とは違いTシャツにチノパン、そして高校生の時と同じメガネをかけた姿に、春香は懐かしさを覚えた。

「お待たせしました……!」

 いつものように無表情で平静を装っているが、額にいくつもの汗が光り、息も切れていることから、きっと大急ぎで駆けつけてくれたに違いない。

 それを見た春香は、彼に対して申し訳ない気持ちになる。昨日の今日なのに、こんなふうに私を心配してくれるなんてーー。大丈夫、この人は信用出来る人だと心から思えた。

「あの……来てくれてありがとう」

 瑠維は汗が気になったのか、額に触れながら下を向くと、首を横に振った。それから春香の脇に置かれていたビニール袋に目をやる。

「買い物中だったんですね」
「あぁ、そうなの。冷凍食品とかナマモノもあるし、本当は早く帰りたかったんだけどねぇ。ただの私の勘違いかもしれないし、大袈裟に言いすぎちゃったかな」

 彼に心配をかけないように、笑顔で軽く言ってみる。とはいえ、ただの買い物がこんな事態になるとは思いもしなかったが。

 瑠維は顔を歪め、唇を噛み締めると、顔を上げて春香を見つめた。

「先輩、やっぱりうちに来ませんか。ナマモノは冷蔵庫に入れておけばいいですし」
「でも……」
「解凍されてしまった食材は、うちのキッチンで調理して持って帰ればいい。帰りも送りますから」
「えっ、キッチン貸してくれるの? それはすごくありがたいアイデアなんだけど……けどそこまでしてもらい義理はないし……」
「義理とかはどうでも良くて……! ただ心配なだけなんです……」

 こんなふうに苛立つ瑠維を見たのは初めてだった。しかし彼がそんなことを言った理由がわからず戸惑ってしまう。

「あぁ、そうか。瑠維くんってもしかして、かなりの心配性さん?」
「……し、心配性……?」
「だって自分のことじゃないのにこんなに心配してくれてるし」

 瑠維は眉間に皺を寄せてから、大きなため息をつく。それから頭を掻きながら、意を決した様子で春香を見つめた。

「……そうです。心配性なんです。だからこのまま帰すわけにはいきません。ついてきてくれますね?」

 まるで念を押されるようにグイッと迫られる。その時に至近距離で見た瑠維の顔を見て、不思議とデジャヴのようなものを感じる。

 この距離感で、こんなふうに彼に見つめられたことがあったような気がするのに、何故か思い出せない。
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