Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
 春香は間近で見る彼の顔の肌のきめ細やかさや、まつ毛の並びの綺麗さに、仕事柄つい見惚れてしまう。

「先輩?」

 呼びかけられて、ハッと我に返る。

「わ、わかった! 瑠維くんの家に行きます!」

 そう答えると、瑠維は安心したようにが頬を染めて満面の笑顔を向けた。

 瑠維のこんなに優しい笑顔を見たのも初めてで、無表情とのギャップに大きく胸が高鳴った。

「る、瑠維くん! あの……デザートとか食べていく?」
「いえ、今はいいです。とりあえず行きましょう」

 春香は頷くと、荷物と伝票を持つ。それと同時に席を立った瑠維は、春香に対してスッと手を差し伸べる。

 この手がどの意味を指すのかわからなかった春香は、悩んだ末に持っていたスーパーのビニール袋を手渡した。

「ありがとう。助かるよー」

 それから春香が立ち上がった瞬間、瑠維が吹き出したのがわかった。表情は全く変わらないが、昨日からの会話でこの吹き出すという行動こそが、彼が面白いと感じた時の反応なのだと理解し、春香もつられて笑ってしまう。

「私、何かおかしかった?」

 驚いたように目を見開いた瑠維は、困ったように口を押さえて頬を染める。

「いえ……あの……先輩に手を差し出したつもりだったのに、まさか荷物を渡されるとは思わず……」
「えっ! そうだったの⁈ あまりそういうスマートな行動に慣れてないから……逆に荷物なんか渡しちゃってごめんなさい」
「いえ、僕の方こそ気付くべきでした。これからは気をつけます」

 再び瑠維の目元が優しく笑った気がした。昨日から彼の新しい一面を知るたびに、得した気分になる。

「うふふ。瑠維くんて面白いねぇ。高校の時にその姿を知りたかったなぁ」

 先にレジに向かって歩き始めた瑠維の背中を見ながら、春香はこそっと呟いた。それは自然と口から漏れた、春香の本音だった。

「……もし知っていたら……何か関係は変わっていたでしょうか……」
「えっ? 何か言った?」
「いえ、なんでもありません」

 春香がレジで店員に伝票を渡すと、横からスッと手が伸び、瑠維が会計を済ませてしまう。

「あ、ありがとう」
「早く行きましょう。ナマモノを冷蔵庫に入れないといけないですからね」

 なかなか顔を見せてくれない瑠維に置いていかれないよう、春香は思わず彼のTシャツの裾を掴んだ。

 だけど気付けば歩く速度は春香に合わせてくれる。そんな瑠維を可愛いと思ってしまう自分がいた。

 さっきまであんなに怖かったのに、またしても瑠維のおかげで心が安堵感が広がる。一人ではどうにも出来なかった道を、彼が拓いてくれた。

 瑠維くんと再会出来て本当に良かったーー椿と博之に心の底から感謝した。
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