Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
「先輩、冷蔵庫はこちらです。早く入れないと食材が傷みますよ」
「あ、あぁ、そうだった。ありがとう。じゃあ冷蔵庫お借りします」

 彼が一瞬悲しそうな顔をしたように見えたが、あれは勘違いだったのだろうか。

 春香は冷蔵庫に向かいながら、瑠維の方をチラッと見る。いつもと同じ無表情のため、感情を読み取ることは出来なかった。

 スーパーのビニール袋を持ったまま、春香はカウンターキッチンの中へと入っていく。壁際に置かれた観音開きの冷蔵庫を開けると、意外にも半分ほどが食材や飲み物で埋まっていた。

「瑠維くんって自炊するの?」

 驚いたように声を発した春香は、背後にぴったりと付くくらいの距離に瑠維が立っていたことに気付き、体を硬直させる。

「あぁ、自炊っていっても、混ぜるだけとか、かけるだけみたいなのばかりです。野菜も積極的に摂らないから、野菜ジュースで補ってる感じですね」

 よく見てみれば、調味料や副菜的なものがたくさん揃っている。それらと自分が持っている食材を照らし合わせると、いくつかのレシピが頭に浮かんできた。

「ねぇ瑠維くん、今夜ってどこかに行く予定とかある?」
「いえ、ありませんけど」
「じゃあ私が夕飯作って、ここで食べて帰ってもいい?」
「……そ、それは構いませんが……」

 すでに解凍されてしまった食材は使い切らなければならないし、それを常温で持ち歩くのも勇気がいる。

「よし! じゃあそうさせてもらおうかな。冷蔵庫の中のものって使っても大丈夫?」
「も、もちろんです」
「あっ、調理道具はあるかな?」

 春香が聞くと、瑠維はIHコンロの下の引き出しを引っ張り出す。そこにはフライパンや鍋、ザルやボウルまできちんと揃っていた。

「あの……いいんですか? 作るのは構わないので、持ち帰ってくれていいんですよ」
「瑠維くん、それは私が作ったものを食べたくないってこと?」
「いえ! むしろ食べたいです!」
「じゃあ一緒に食べよう。とはいえ、お口に合わなかったらごめんね」

 瑠維は俯くと、首を横に振る。同意が得られたことで春香は満面の笑みを浮かべた。
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