Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
* * * *

 IHコンロを使うのが初めての春香は、フライパンを載せ、野菜に火が通っていく様子を驚いたように眺めていた。

「なんか火がないのに料理ができるなんて、本当に不思議だよねぇ」
「僕は先輩がここで料理をしていることの方が不思議です。しかも僕のエプロンまで着けて」
「借りちゃってごめんねー。洗濯して返すから安心して」
「いえ、うちで洗うので大丈夫です」

 調理を始めようとした時、服が汚れないようにと瑠維がデニム素材のエプロンを貸してくれたのだ。

「自分の家のキッチンだから気になっちゃうと思うけど、後で片付けちゃんとやるし、仕事してていいんだよ」

 先ほどから何度もこう伝えているのだが、瑠維は、
「大丈夫です」
の一点張りで、カウンターに体を預けながら春香の様子をじっと眺めている。

 今まで誰かに見られながら料理をすることがなかったため、どこか緊張してしまう。何か気を紛らわそうとして、気になっていたことを尋ねることにした。

「瑠維くんって、ヒロくんとはずっと連絡を取り合ってたの?」

 卒業後、ほとんどの友人との連絡を絶った博之が、瑠維とは繋がっていたことが興味深かった。

「別に特別な理由はないです。剣道部時代に連絡先を聞いていたので、そのままこちらから連絡をし続けただけで」

 それを聞いて春香は思わず笑い出す。

「な、なんですか?」
「ううん、『連絡をし続けた』っていう表現が瑠維くんらしいなって思って」
「……そうですか?」
「うん。あの頃も瑠維くん、ヒロくんにすごく懐いていたよね。きっとあの関係がずっと続いていたんだろうなって思うと、すごく微笑ましいなって」

 春香と博之との関係は卒業式の日に終わってしまった。フラれるのがわかっていて告白したあの日が最後だとわかっていた。

 それでも言わずに終わることは出来なかった。だって高校時代を捧げた恋だったから。だからこそ、今はすっかり吹っ切れているし、椿と博之を心から応援出来るのだ。

「僕は……好きになるまで時間がかかるんです。だから一度好きだと思ったらそう簡単には諦められないし、とことんまで好きになってしまうーー面倒くさい男なんですよ」

 瑠維は遠くを見るような目で、ぼんやりと宙を見つめる。そんな瑠維を見ながら、春香は首を傾げた。
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