Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
「私はそうは思わないけどなぁ」
「えっ……」
「そんなふうに好きになったことも、好きになられたこともないけど、でもそれってその人を信じることが出来て、心の底から本当に好きになった相手ってことでしょう? そういう人って簡単には出会えないはずだから、絶対に大切にした方がいいと思う。それこそ女の子なら逃しちゃダメだよ!」

 ついお玉を持ったまま力説してしまったが、瑠維が吹き出したのを見てハッと我に返る。

「……そうですね」
「今、笑ったよね?」
「笑ってません」
「まぁいいけど。あーあ、私もそういう人と出会いたいなぁ。あっ、でも椿ちゃんはそういう人かもしれない」

 彼女との再会は、春香に大きな変化をもたらしてくれた。人を思いやること、そして自分を大切にすること。当たり前のことをだけど、実感することができたのは、椿の人柄だと思う。

「正直なことを言うと、先輩が……近藤先輩と仲が良いと知って驚きました」

 鍋の中で春雨と乾燥ワカメを茹で、鶏がらや醤油で味付けをしていた春香は、スープをかき混ぜながら瑠維の方を向いた。

「どうして?」
「あの頃はお二人に接点はなかったしーー」

 溶いた卵を入れて一煮立ちさせ、塩と胡椒とごま油で味を整えてから火を止めた。

「私たちが仲良くならない理由が何かあるの?」

 瑠維は続く言葉をぐっと飲み込み、急に黙り込んでしまう。それはまるで、理由を知ってると言っているようなものだった。

 春香は小皿にスープを少しだけ注ぐと、味見をしてからコクンと頷く。

「瑠維くん、スープを入れる、少し深めのお皿ってある?」
「あ、あります……」

 キッチンへと回り込んだ瑠維は、背面に置かれた食器棚の扉を開き、中から白いスープ皿を取り出す。それからもたついた手で、コンロ脇のワークトップに並べて置いた。

 その間に春香は隣のコンロのフライパンの蓋を開け、熱が通ったことを確認すると、IHコンロのスイッチを切る。

「あと平らなお皿が欲しい」
「何枚いりますか?」
「二枚。あっ、お米はあと何分で炊ける?」
「五分です」

 先ほどの気まずさを消そうとするかのように、春香の問いかけに、瑠維は的確に応えていく。

 別にはっきり聞いてくれていいのにーー瑠維が妙な気を遣っていることに気付いていた春香だったが、彼がどんな考えの元で発言したのかがわからないからこそ、憶測だけで返答したくなかった。
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