Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
* * * *

 仕事を早めに仕事を切り上げた春香は、いつもの従業員口とは違う店舗内の通用口を使って外に出る。

 辺りを見回し、たくさんの客の隙間から町村の姿を探したが、彼の姿は見えなかった。春香はホッと息を吐いて、俯きがちに店の外に出る。

 駅へと歩きかけたが、町村に待ち伏せをされていたのが改札付近だったことを思い出し、ロータリーにあるタクシー乗り場に向かう。幸運なことに誰も待っている人はおらず、すぐに乗ることが出来た。

 自宅までの住所を伝えた後、ハッとして窓から外を観察する。しかし町村らしき人影は目に入らない。安心したように春香は背もたれにどさっと倒れ込む。

 怖くて悲しくて不安に押しつぶされそうだったが、無事に帰路につけたことで、少しだけ冷静さを取り戻せた。

 今日泊まれる場所を探すため、カバンからスマホを取り出すと、瑠維から何通ものメッセージが届いていることに気付く。

『どこか教えてくれたら、お店まで迎えに行きます』
『一人は危険です。メッセージ見たら連絡をください』

 たかが高校が同じなだけなのに、どうしてこんなにも親切にしてくれるんだろうーーだからこそ彼を巻き込みたくない。

 警察に相談したら、瑠維くんにちゃんと連絡をするんだ。それまでは彼に関わらないようにしないと。

 タクシーがマンションに到着し、春香は急いで中へと入っていく。オートロックの自動ドアを開け、エレベーターを待つ間は、わざと後ろ向きに立って近づいてくる人がいないかを確認していた。

 到着したエレベーターに乗り込むと、閉めるボタンを何度も押してから四階のボタンを押す。

 エレベーターが動き出し、通過する階をガラス窓からじっと見つめる。今日はいつもより時間がやけに長く感じた。

 四階に誰もいませんようにーー緊張で呼吸すらままならない中、春香は両手を合わせて必死に祈る。

 エレベーターの動きが止まり、扉が開く音が不気味なほど大きく聞こえた。

 ゆっくり外に出て辺りを見回すが、誰もいない。ホッと息を吐き、足早に自分の部屋に向かう。

 鍵を出し、開錠した瞬間に部屋に滑り込む。そしてそのままドアを閉めようとしたーーその時だった。

 突然強い力でドアを引っ張られ、春香はバランスを崩してドアに体を打ちつける。そしてその隙間に、誰かの足が差し込まれたのだ。
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