Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
「うん、わかった。でもなるべく早く帰ってきてくれると……安心かな」

 昨夜ぐっすり眠れたのは瑠維くんが隣にいてくれたからーー春香が遠回しにそのことを口にすると、瑠維はメガネを押さえながら下を向く。

「……頑張ります。あと申し訳ないのですが、夕飯も一人分でお願いします」
「あぁ、そうか! 忘れてた」

 その時に二人の前にパスタが配膳される。

「一人の夕食なんて久しぶり。なんか変な感じ」
「春香さんのご飯が食べられないなんて、すごく残念です」

 瑠維がそんなことを言うとは思わなかったから、春香の方が恥ずかしくて照れてしまう。たとえ食事のことだとしても、誰かにそんなふうに求めてもらえるのは嬉しかった。

「ま、またいつでも作るよ⁈」

 春香が言うと、瑠維はパスタを食べていた手を止める。

「あの……ストーカーが捕まったからと言って……すぐには出ていかないでくださいね。もう少し春香さんのご飯を食べていたいので」

 新居を探そうとしていた考えを見透かされたかのように、春香の思考は止まってしまう。

 それは私にそばにいて欲しいって言っているように聞こえるよーー瑠維にじっと瞳を見つめられ、息苦しさと体の芯が熱くなるような感覚に陥る。

 瑠維くんと一緒にいると、自分の中の欲望が溢れ出てしまいそうになる。もし私が何か行動を起こせば、先輩後輩というか、私を守ってくれた大切な友人を、下手をすれば失ってしまうことになるのだ。

 友人としてのこの距離感を保てれば、もう少しこの時間を楽しめるはず。それならしばらく黙ってそばにいても許されるだろうかーー。

「じゃあ、お言葉に甘えてお世話になっちゃおうかな……」

 春香が言うと、瑠維は目を細めて少しだけ口角を上げた。この仕草にこんなにときめく日が来るなんて、高校生の春香には想像出来なかっただろう。

 時間とともに心も変化するのだと、改めて実感するのだった。
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