Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
「そんな……私はそこまでの人間じゃないよ」
「そういうことじゃないんです。僕の心がずっと春香さんだけを欲していた……だからどんなに辛い時も耐えられた。春香さんを思うだけで自我を保てたし、強くなれたんです」

 春香の中で、またしても気になるワードがうまれた。"自我を保てた"? それは一体どういう意味だろう。彼のこれまでの人生の中で、自我を保てなくなるほどの何かが起きていたのだろうか。

 春香の心に疑念が湧き始めたのも束の間、瑠維の指が春香の唇に触れると、緊張してそれ以上何も考えられなくなる。

「好きです。春香さんのことだけがずっと好きなんです」

 その言葉を聞いただけで、春香の目からは涙が溢れ、腰が砕けたようにふらつき、瑠維の肩に手をついていないと倒れてしまいそうになる。

 好きな人に『好き』と言ってもらえるのは、こんなにも嬉しくて幸せなことだったのだと初めて知った。

「私も……」

 自然と言葉が紡がれる。

「私も瑠維くんが好き……」

 瑠維は驚いたように目を見開く。

「えっ……す、好き……?」
「うん、再会してからずっと瑠維くんが私を守ってくれて……気付いたら好きになってたの」

 その言葉を聞いた瑠維が今までにないほど嬉しそうに微笑んだので、春香の心臓は早鐘にように打ち始める。

「春香さん、キスしてもいいですか?」

 返事の代わりに、春香から瑠維にそっとキスをする。それが合図となって、瑠維は何度も何度も春香の唇に優しいキスを降らせた。

 春香が瑠維の首に手を回して引き寄せると、彼のキスは激しさを増していく。お互いの唇を貪るようにキスをし、春香の中へと入ってくる瑠維の舌を受け入れるように絡め合う。

 思わず抱きついたまま瑠維を勢いのまま押し倒してしまい、二人の体が水中に沈んでも、離れることは出来なかった。

「春香さん……春香さんが欲しいです……」

 呼吸のために唇が離れるほんの一瞬に、瑠維は感情を吐露する。それすら春香の興奮を更に掻き立てていく。

 春香は息を切らしながら、足の間に感じる彼のモノが、はち切れんばかりになっていることに気付いた。春香がそっと触れると、手の中で大きく脈打っていた。

 私が彼を興奮させてるの? そう思うと体の芯が熱くなり、春香は唾をゴクリと飲み込む。

 私も瑠維くんが欲しい、私の中で彼を感じたいーー自分の中にこんな感情があるなんて初めて知った。

「私も……早く瑠維くんを感じたい……」

 その瞬間、瑠維は春香の体を抱き上げるとプールの縁に座らせ、自分も勢い良くプールから上がった。

「着替えて来てください。早く部屋に戻りましょう」

 彼の濡れた筋肉質な上半身に見惚れていた春香は、その力強い腕に引かれて立ち上がると、更衣室に急いだ。
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