Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
 大きく胸を上下させ、二人はベッドに転がった。それから瑠維が腕を差し出したので、春香はその腕に頭を載せた。

 視線が絡み、見つめ合うと、どうしてもキスをしたい衝動に駆られ、春香の方から唇を重ねる。まさかキスをされるとは思っていなかったのか、瑠維は照れたように俯いた。

「春香さんは僕の想像を越えてくる……」
「……そうなの?」
「そうなんです」
「例えばどんな?」

 春香はきょとんとした顔で目を瞬く。

「……春香さんがあの本を読むなんて思いもしないじゃないですか」
「なんで思わないの? 私だって本くらい読むよ」
「読んだとしてもロマンス小説ですよね」
「うっ、確かにそうだけど……」
「だからきちんと説明しようと思って、考えをまとめるためにプールに行こうとしたのに、一緒に来ると言い出すし」

 考えをまとめようとして? そう言われ、瑠維が時折黙り込んでは考えこむ姿を思い出した。

 つまりあの短時間では考えがまとまらず、わざわざプールまで行こうとしてたということだろうか。

「それにフラれる覚悟でいたのに……僕を好きだなんて言われたら止められないですよ」
「……ん? なんでフラれるって思うの?」

 その言葉を聞いて、瑠維は悲しげな笑みを浮かべる。

「春香さんはきっと何も覚えていないんですよね」
「それって……あの小説に書かれていたこと?」

 瑠維は春香の髪を撫でながら、過去を懐かしむように目を細める。

「僕は中学の時から、他校生にも関わらず、池田先輩に憧れていたんです。だから同じ学校に進学しました。でもいざ入学してみたら、先輩の隣をずっと陣取ってる人がいるじゃないですか。おかげで部活の時にしか先輩と話せる機会はありませんでしたよ」

 それはどう考えても一人しかいない。春香は苦笑いをしながら瑠維を見つめる。

「……もしかして、それが私?」
「その通りです。僕は自分の生活から愛だの恋だのは徹底的に排除していたので、言い方は悪いですが、春香さんたちのチャラチャラした雰囲気が最初は嫌いでした」

 確かに瑠維たちのような真面目なタイプから見れば、春香たちはどこか浮ついていたのは否めない。
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