Love is blind〜無口で無愛想な作家は抑えられない独占愛を綴る〜
鮎川をカウンター前の椅子に座らせると、春香はメイクの準備をしていく。
「それにしても驚きました。まさか佐倉さんのお勤め先がこちらだったなんて」
「就職してからはずっとこの店舗に勤務しているんです。それなのに瑠維くんが近くに住んでいることも最近知ったくらいなのでーーあっ、アイメイクを落とさせていただきますね」
目を閉じた鮎川の目元のメイクをそっと落としていくと、彼女が小さく口を開いた。
「お二人が上手くいったようで安心しました。何しろ『Love is blind』のラストは謎に包まれていましたから」
「えっ、でも身を投げたって……」
「そうです。身を投げたところで終わっているんです。だから読者の中ではその後について様々な論争が繰り広げられていて、そのまま死亡説、一命をとりとめて新たな人生を歩む説、そして初夏と結ばれる説」
「そうだったんですか……私はてっきりそのまま亡くなってしまったと思っていました」
「読み手もそれぞれの想いを持っていますから。こうあって欲しいという希望を重ねるんでしょうね」
目元にベースメイクを施しながら、鮎川の言葉に耳を澄ませる。きっと彼女自身もあの作品を読み、自分なりの思いを重ねているに違いない。
「先生がラストを曖昧にしたのは、佐倉さんとの未来を夢見ていたからだと思うんです。いつか再会して、結ばれる日が来ることを願っていたーー」
鮎川は目を開くと、鏡越しに春香を見つめる。
「私もそのラストを願っていた読者の一人なので、お二人が結ばれたことに喜びしかありません」
「……そんなに彼が想ってくれていただなんて知らなかったんです。でも今回……実は私がストーカーのことで悩んでいて、手を差し伸べてくれたのが彼でした」
すると鮎川は目を見開き、驚きというよりは恐怖に近いような表情になった。その様子の変化に春香の方が戸惑ってしまう。
「あの……ストーカー、ですか?」
「あっ、でも逮捕されたんです。部屋に侵入してきた男から瑠維くんが助けてくれて……だから今は安心なんですがーー」
鮎川は眉間に皺を寄せると、何かを考え込むように下を向いた。
ストーカーという非現実的な話題のせいで引かれてしまったのだろうか。でも鮎川に聞きたいこともあった春香にとって、今がちょうど良いタイミングに思えた。
「それにしても驚きました。まさか佐倉さんのお勤め先がこちらだったなんて」
「就職してからはずっとこの店舗に勤務しているんです。それなのに瑠維くんが近くに住んでいることも最近知ったくらいなのでーーあっ、アイメイクを落とさせていただきますね」
目を閉じた鮎川の目元のメイクをそっと落としていくと、彼女が小さく口を開いた。
「お二人が上手くいったようで安心しました。何しろ『Love is blind』のラストは謎に包まれていましたから」
「えっ、でも身を投げたって……」
「そうです。身を投げたところで終わっているんです。だから読者の中ではその後について様々な論争が繰り広げられていて、そのまま死亡説、一命をとりとめて新たな人生を歩む説、そして初夏と結ばれる説」
「そうだったんですか……私はてっきりそのまま亡くなってしまったと思っていました」
「読み手もそれぞれの想いを持っていますから。こうあって欲しいという希望を重ねるんでしょうね」
目元にベースメイクを施しながら、鮎川の言葉に耳を澄ませる。きっと彼女自身もあの作品を読み、自分なりの思いを重ねているに違いない。
「先生がラストを曖昧にしたのは、佐倉さんとの未来を夢見ていたからだと思うんです。いつか再会して、結ばれる日が来ることを願っていたーー」
鮎川は目を開くと、鏡越しに春香を見つめる。
「私もそのラストを願っていた読者の一人なので、お二人が結ばれたことに喜びしかありません」
「……そんなに彼が想ってくれていただなんて知らなかったんです。でも今回……実は私がストーカーのことで悩んでいて、手を差し伸べてくれたのが彼でした」
すると鮎川は目を見開き、驚きというよりは恐怖に近いような表情になった。その様子の変化に春香の方が戸惑ってしまう。
「あの……ストーカー、ですか?」
「あっ、でも逮捕されたんです。部屋に侵入してきた男から瑠維くんが助けてくれて……だから今は安心なんですがーー」
鮎川は眉間に皺を寄せると、何かを考え込むように下を向いた。
ストーカーという非現実的な話題のせいで引かれてしまったのだろうか。でも鮎川に聞きたいこともあった春香にとって、今がちょうど良いタイミングに思えた。