Snow magic
「あっ、お待たせ〜!椛ちゃん。」
「あぁお疲れさまです。早かったですね、叶葉さん。」
私は叶葉さんの指定されたファミレスで待っていた。
叶葉さんはここへ来る前に水族館で、取材してきたらしい。
なにか思いついたのか、少し目が輝いている気がする。
「進捗はどんな感じですか?」
「う〜ん。まぁまぁってとこ?でも、今いいこと思いついたからまとめようと思って。」
あはは〜っと笑いながら答えた叶葉さん。
「冒頭だけできたから読む?というか確認お願いします!」
「オッケーです。」
私は頷いて原稿を受け取った。
今、叶葉さんは純愛ラブストーリーを書いている。
ある日、彼氏にこっぴどく振られて1人きりで大好きな水族館にいるところ、同じく1人きりの男性と出会う。
徐々に2人ともお互い気を許すが、関係は何も進展しない。毎週土曜日にジンベイザメの水槽の前で、会うだけの2人。
そんな2人の時間の進みがゆったりとしている温かいストーリーだ。
「……はあ。やっぱ、叶葉さんってすごいですね…。」
冒頭だけなのに読んだ私の口からは感嘆のため息が出た。
一から創り上げたはずの物語なのに、読みやすいし感情移入がしやすいため本当に起こった出来事だと錯覚してしまうほどだ。
……やっぱり、中途半端に書いていた私とは大違い。
私が小説家を目指す方がバカだったのだ。
「そう?ありがとうね〜。」
と叶葉さんは朗らかに笑った。
そして、
「……それに、これ本当の部分もあるしね。」
と、窓の外へ視線を移してからポツリと呟いた。