Snow magic
「あれは大学最後の夏くらいからだったかな、なんとなく目が霞むようになってきたんだ。」
柚燈があまりにも他人事のように話し始めるから、まるで小説の最初の一言目のようだった。
「最初は目が疲れてんのかな、ぐらいにしか思わなかったんだけど。どんどん見えなくなるようになって。なんか、霧があたりを覆って見えづらいみたいなそんな感じ。」
「……えっ、」
思わず戸惑いの声を上げてしまった。
焦るように心臓の音が冷たく残酷に響く。
…あの、いなくなったあの年から…、ずっと……柚燈は、目が悪い程度の見えないではなく、本当に目が見えてなかった……?
ずっと……私が一番近くで柚燈を見ていたのに?
私は…、何で気付けなかったの……っ…?
震える私に気づかないようにまた話を進めた。
「気づいていながらずっとほっといたんだけど。……自分がおかしくなってることを認めたくなくて。」
…今思えばバカな判断だったと思うよ、って笑いながら、言った。
「……っ。」
なんで……?
なんで、笑ってられるの……?
怖くないの…、
胸がもっとギュッと締め付けられる。
「まぁ、普通にしてたつもりなんだけど、桜也にすぐバレて話した直後に誘拐されるように病院連れてかれて。」
え……っ!?
……桜也は、見抜いていたの…?
もう何もかもが、驚きで声が出ない。
というか、出せない。
もう嫌だ……っ
もう、……この話の結論なんて聞きたくもない。
何より、桜也よりも長い時間そばにいた私が気づけていたら、ここまで病気が進行する前に病院に連れて行って対処ができていたかもしれないのに………。
罪悪感と後悔と驚き___
そんな権利なんてないのに、辛すぎて私が泣きたい。