極上ドクターは再会したママとベビーを深い愛で包み込む
 緊張して動悸が止まらない。拓海さんも一緒に呼び出されているんだろうか。そうだったらいいけれど、もしひとりだったらどうしよう。どんなふうに挨拶すればいいのかわからない。
 院内の廊下を足早に進み、普段医療スタッフさえも使うことがないエレベーターへと乗り込む。最上階へたどり着くと、そこはリノリウムの床ではなく赤いカーペットが敷かれたVIPな雰囲気漂うフロアだ。
 院長室と彫られたプレートのドアを目の前にして、ごくりと唾を飲み込んだ。覚悟を決めてノックをすると、中から「どうぞ」と男性の声が聞こえた。
「失礼いたします」
 おずおずとドアを開けて足を踏み入れると、部屋にはデスクに頬杖をつく白髪混じりの男性——院長と、隣に上品なワンピースを身に纏う奥様らしき人が立っていた。拓海さんの姿はない。歓迎されていないのは雰囲気から伝わってくる。奥様のほうは穏やかそうな雰囲気ではあるものの笑顔ではないし、院長先生に至っては不機嫌そうに、上から下まで品定めするように私を見ているのだ。
 もう一度ごくりと唾を飲み込み、一歩前へ出る。
「新生児科所属の小鳥遊菜乃花と申します。何か御用ーー」
「君が拓海と付き合っているというのは本当か?」
 緊張でつっかえながらしゃべる私の言葉を、院長が厳しい声で遮った。
< 32 / 88 >

この作品をシェア

pagetop