極上ドクターは再会したママとベビーを深い愛で包み込む
 アパートから歩いて五分ほどのところに産婦人科を標榜している病院を見つけ、早速そこへ向かった。
 診察室に入ると、年配のやさしそうな女医さんが迎えてくれた。
「小鳥遊さんね。出産について迷ってるようだけど、ご結婚もされてないのね」
「はい……」
 診察の前に書いた問診票には、『未婚・既婚』のほかに、『もし妊娠していたら出産する意思はあるか』という質問があった。私は『ある』と言い切ることができなくて『考え中』に丸をつけたのだ。
「じゃあ、内診台へどうぞ」
 カーテンで仕切られたスペースで下着を取り、スカートをめくって内診台に上がる。子宮癌検診で乗ったことがあるけれど、内診台というのは恥ずかしくて仕方ない。思いきり股を広げられるのだ。
「ちょっと中を見ますね」
 経腟プローブが身体の中に入る感覚がする。すると、私の見える位置にあるモニターに、黒い袋のようなものが写った。中に白い小さなそら豆のようなものもある。よく見ると、ひとの形に見える。
「妊娠してますね。ほら、心拍ももう確認できますよ」
 ひとがたの中で、パクパクと忙しなく動くものが見えた。
 これが心臓……? 生きているんだ、小さな命が私の身体の中で。
 言いようのない感動が胸に溢れてくる。病院に来る前は、どうしようという戸惑いの感情ばかりだったけれど、不安なんて一気に吹き飛んでしまった。
 内診台を降り、再び診察へと戻る。
「妊娠の継続を望まない場合は早めに来てね。そうでないなら……」
「あの」
 先生は口元に笑みを浮かべながら、「ん?」と軽く首を傾げる。
「産みます」
 意を決してそういうと、先生は笑った。
「そう言うと思ったわ」
「え、どうしてですか?」
「だって、内診前と全然顔つきが違うんだもの」
 さすがはベテラン医師だ。
それから、妊娠中の注意点などを看護師から説明され、診察を終えた。
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