極上ドクターは再会したママとベビーを深い愛で包み込む
 動揺して片手で持っていたグラスの中身が零れかけた。
 拓海さんは呆れ顔だ。

「何を今さら驚いているんだ。この前プロポーズをして、君はそれを受けただろう。結婚というのは入籍するということだぞ」
「それはそうなんですが、実感が湧かなくて……」

 私、本当に拓海さんと結婚するんだ……。
 なんだかまだ夢を見ているような気分のため、手放しで喜べない。

「君のご両親にご挨拶にもいかなきゃな」
「あ、いえ……」

 胸の前で手を振った。

「うちは両親共に亡くなっているんです。私が社会人になってからバタバタと。兄弟もいないですし、挨拶の必要はないです」
「そうか」

 拓海さんが眉を顰めたため、暗い雰囲気にならないようにと明るく笑ってみせる。

「でも拓海さんのご両親にはご挨拶しなきゃですね」

 拓海さんの表情が硬くなり、空気が変わったのがわかった。
 拓海さんはグラスを傾けて一口飲み、それから視線を合わせないまま言う。

「俺の両親への挨拶は事後報告でいい。色々口を出されると面倒だからな」
「そう、なんですか……」
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