極上ドクターは再会したママとベビーを深い愛で包み込む
*拓海side*
「経過は異常なしです。もう心臓外科の通院は終わりでいいですよ」
「そうですか」
茉由ちゃんを抱っこした母親が、ホッとした様子でため息を吐く。
「フォローアップ外来のほうはどうですか?」
「茉由は成長曲線でも大きいほうなので、もう修正月齢で見なくても大丈夫だと言われました。フォローアップも、来週の一歳児検診でおしまいだそうです」
「それはよかったですね」
ええ、と母親は嬉しそうに笑う。
茉由ちゃんが退院してから一年。
もう定期的に病院に通う必要がなくなる。
ご両親は一安心だろう。
特に、生まれてすぐに心臓の手術が必要だと伝えたときは、夫妻はこの世の終わりのように青ざめていたのだから。
茉由ちゃんが順調に健やかに成長してくれて本当に良かったと思う。
「そういえば、小鳥遊さんはお元気ですか?」
ギクッと肩が揺れたが、ポーカーフェイスを装う。
「退院してから全然お会いできなかったので……」
「彼女はGCUの担当なので、外来には出ないんですよ」
「そうなんですか。よろしくお伝えください」
彼女は少し残念そうにしながら、茉由ちゃんを抱き上げて頭を下げ、診察室を出て行った。
途端にため息が漏れる。
「辞めたと伝えたほうがよかったんだろうか……」
辞めた。いや、正確には辞めさせられたのだ。
俺が菜乃花の退職を知ったのは、三日も経ったあとだった。
直前に院長に呼び出されていたが、詳しいことはわからないとGCUの師長は言った。
もちろん院長を問い詰めたが、知らぬ存ぜぬの一点張り。
菜乃花と仲がよかった松田理沙という看護師に聞いても、連絡先はわからないという。
あれからもうすぐ一年だ。
方々を当たってはいるものの、菜乃花の情報は入って来ない。
今、一体どこで何をしているんだろう……。
診察室のノック音が聞こえた。
「はい」
「失礼します」
入ってきたのは外科の看護師だ。
「明日のカテーテルオペの患者さんのカルテです」
「わかった」
看護師は頭を下げて去っていく。
「途方に暮れる暇もないのか」
愚痴をこぼしながらため息を吐く。
院長は次々と縁談を持ってくるが、頑なに断っている。
他の女と結婚なんかするものか。
いつの日か必ず菜乃花を見つけ出す。
気合いを入れて、カルテに目を通し始めた。
「経過は異常なしです。もう心臓外科の通院は終わりでいいですよ」
「そうですか」
茉由ちゃんを抱っこした母親が、ホッとした様子でため息を吐く。
「フォローアップ外来のほうはどうですか?」
「茉由は成長曲線でも大きいほうなので、もう修正月齢で見なくても大丈夫だと言われました。フォローアップも、来週の一歳児検診でおしまいだそうです」
「それはよかったですね」
ええ、と母親は嬉しそうに笑う。
茉由ちゃんが退院してから一年。
もう定期的に病院に通う必要がなくなる。
ご両親は一安心だろう。
特に、生まれてすぐに心臓の手術が必要だと伝えたときは、夫妻はこの世の終わりのように青ざめていたのだから。
茉由ちゃんが順調に健やかに成長してくれて本当に良かったと思う。
「そういえば、小鳥遊さんはお元気ですか?」
ギクッと肩が揺れたが、ポーカーフェイスを装う。
「退院してから全然お会いできなかったので……」
「彼女はGCUの担当なので、外来には出ないんですよ」
「そうなんですか。よろしくお伝えください」
彼女は少し残念そうにしながら、茉由ちゃんを抱き上げて頭を下げ、診察室を出て行った。
途端にため息が漏れる。
「辞めたと伝えたほうがよかったんだろうか……」
辞めた。いや、正確には辞めさせられたのだ。
俺が菜乃花の退職を知ったのは、三日も経ったあとだった。
直前に院長に呼び出されていたが、詳しいことはわからないとGCUの師長は言った。
もちろん院長を問い詰めたが、知らぬ存ぜぬの一点張り。
菜乃花と仲がよかった松田理沙という看護師に聞いても、連絡先はわからないという。
あれからもうすぐ一年だ。
方々を当たってはいるものの、菜乃花の情報は入って来ない。
今、一体どこで何をしているんだろう……。
診察室のノック音が聞こえた。
「はい」
「失礼します」
入ってきたのは外科の看護師だ。
「明日のカテーテルオペの患者さんのカルテです」
「わかった」
看護師は頭を下げて去っていく。
「途方に暮れる暇もないのか」
愚痴をこぼしながらため息を吐く。
院長は次々と縁談を持ってくるが、頑なに断っている。
他の女と結婚なんかするものか。
いつの日か必ず菜乃花を見つけ出す。
気合いを入れて、カルテに目を通し始めた。