極上ドクターは再会したママとベビーを深い愛で包み込む
「子育ては本当に大変だな。それを菜乃花ひとりに全てやらせて、拓斗くんにも父親がいなくて寂しい思いをさせて、本当に申し訳なかった」

 大きく頭を下げられたため、私はあたふたしながら「いえ」と否定する。

「私が自分で選んだ道なんです。拓海さんは悪くありません」
「だが……」

拓海さんは本当に何も悪くない。
私は院長に言われて仕事を辞めることにしたのだし、そのことを拓海さんは知らなかった。
妊娠についても同じだ。
顔を曇らせる拓海さんに、明るく返す。 

「それに今日、拓斗すごく楽しそうでした。連れて行ってもらえて本当によかったです」
「……そうか」

 よかった。
 拓海さんは少し安堵した様子だ。

「だが、これで終わりにするつもりはない。俺は昔も今も変わらず菜乃花を愛してる。もちろん拓斗くんのこともだ。今はまだ無理でも、いつか三人で暮らせたらと思っている」

 そんなふうに言ってくれるのはとても嬉しい。
 けれど、その『いつか』はこないかもしれない。
 だって、私たちには大きな障壁があるのだ。

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