私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
「驚かせようと思って黙っていたんだ」
 飛行船だった。
 だだっ広い河原に、ぷらぷかと係留されている。アーモンド型の白い船体で、大きな風船部分に不釣り合いな小さな四角い操縦席があった。客室は風船の胴体内部に設計されている。

「全長二百五十メートル、乗員はクルーを合わせて百二十人。飛行船には硬式、半硬式、軟式の三種類があって、これは硬式だ。だから客室を広く作れた」
「爆発しないですよね?」
「昔と違って水素は使ってないからな。でもエンジンが爆発することはあるかもな」
「怖いこと言わないでください!」
 一鈴の反応に、穂希はくすくすと笑った。

「眼鏡に蝶ネクタイの小学生がいませんように」
「なぜだ?」
「高確率で爆発します。本人のせいじゃないですけど」
「そいつも呪われてるな。君はそのマンガが好きなのか?」

「違います。たしなむ程度です」
「たしなむって」
 穂希はまた苦笑した。
「一通りの防犯設備はある。金属探知機も使っているし、刃物の持ち込みも許さない。公式な初飛行に不吉なことを言わないでくれ」
「自分だって言ったくせに」
 一鈴はぼやいた。

 開会式の会場には爽歌、佳乃、莉衣沙もいた。
 爽歌は一鈴を見るとにこやかに会釈をした。
 莉衣沙と佳乃は一鈴を見つけるとすぐに寄ってきてくれた。莉衣沙は車いすだった。
「一鈴さん、久しぶり!」
「お久しぶりですわね」
「お久しぶりです」
 一鈴は頭を下げた。

 佳乃はゴールドをあしらったベージュのドレスで、莉衣沙はペパーミントグリーンのドレスだった。二人とも見事に着こなしている。
「あの男と一緒なのね。よりを戻したの?」
「ちょっと理由があって」
 ごまかすように言うと、莉衣沙は不審な目で一鈴と穂希を見た。
「そもそも別れたつもりはない」
 穂希が一鈴の肩を抱く。
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