私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
 


 飛行船は定刻に離陸した。
 安定飛行に入ると、佳乃と祥平の挙式が執り行われた。
 飛行船内に作られた簡易の祭壇で、神父を前に佳乃と祥平は愛を誓いあった。
 花嫁と花婿が退場すると、披露宴までしばらく間があった。
 穂希が知り合いの社長と話し始めると、一鈴はそっと会場を抜けだした。

 通路に立ち、ぼうっと窓の外を眺める。
 眼下には街並みが広がるが、空からは濃淡のある灰色にしか見えない。遠くには山の濃い緑が見えていた。
 そして、ハッとする。
「私、鳥じゃないのに、空飛んでる」
 スズメよりも高く、なお高くに。
「一鈴さん、なにしてるんだ」
 声をかけられて振り返ると、そこには穂希がいた。

「ちょっと感慨にふけってた。いろいろあったなあって」
「……そうだな」
「佳乃さん、幸せそうで良かった。式もすごく感動的で」
 いつもは毅然としている佳乃が、今日はずっとやわらかく微笑んでいた。
 背の高い祥平と並ぶと一枚の絵のようだった。
 花嫁の父は涙をこらえられず、周囲の涙を誘った。

「俺たちの式も感動的なものにしよう」
 言われて、一鈴の顔に一気に血が上った。
「そ、そういうのは」
「婚約して、一年たつんだぞ」
「ソウデスネ」
 一鈴は穂希の顔を見られなくて、赤い絨毯を見つめる。

 穂希が結婚の挨拶に来たときにはひと騒動だった。
 陽太は穂希を殴ると宣言し、殴れ、と穂希は言い、父母と自分で必死に止めた。碧斗はひまりを連れて二階に避難した。
 滉一は責任をとれと言うだけだったが、恭子はかなり長いこと反対していて、最近やっと結婚を認めてくれた。

「一鈴さん、顔をあげて」
 言われて、一鈴は顔を上げる。
 まっすぐな穂希の視線がぶつかる。
「俺を幸せにしてくれ」
「だから、逆でしょ」
 一鈴が答えると、ふっと穂希が笑った。

 穂希の顔が近付く。
 一鈴は目を閉じた。
 穂希の唇が重なり、一鈴は彼の背に手を回した。その左手にダイヤがきらりと輝く。

 窓の外に広がる空はどこまでも青く澄み、飛行船はゆったりと泳いでいた。

終
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