私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
「突き落とされたのは本当のようだな」
帰りの車中で、コスモは言った。
「あいつはしょうもない意地悪を言うが、嘘をつくタイプじゃないと思う」
「でも防犯カメラには怪しい人は映ってなかったって奥様が」
「内部の犯行か?」
「働いている人は身辺調査をしてから雇うって聞きました。変な人はいないんじゃないですか?」
「ネズミステーキを出された人がそれを言うのか」
コスモがあきると、一鈴は、えへへ、と笑った。
「金はいくらでも欲しいってやつはいるから」
どきっとした。お金に目がくらんで偽装の婚約をしたのは自分だ。
「犯人は殺す気だったのかどうか。ケガだけなら自演もありうるか?」
「死ぬ可能性もあるから、どうでしょう」
「下にころがって人が通るのを待つ方がいいよなあ。あいつに骨折してまでっていう根性はないだろうし」
「それにしても、莉衣沙さんがあんなこと考えてたなんて驚きました」
「結婚にこだわるのはコンプレックスからだったんだな。何不自由もなく見えたのに」
「かわいいのがコンプレックスの人なんて初めてです」
「私もだ」
コスモが笑うから、一鈴もつられて笑った。
帰ってからはメイドに聞きこみをした。莉衣沙を発見したメイドを含め、誰からも有効な証言は得られなかった。
二人は聞き込みしたことを多美子にこっぴどく叱られた。