私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
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コスモが池のそばの離れを訪れたとき、一鈴と穂希は仲良く洗い物をしていた。穂希の手作りの昼食を食べたのだという。
「いつの間にこんなに仲良くなったんだ?」
コスモが呟くと、一鈴が否定した。
「仲良いわけじゃありません」
「恥ずかしがるな。ペンダントもつけてくれてるじゃないか」
「仕方なく、です!」
もう二人はじゃれあってるようにしか見えない。
コスモは愕然と二人を見る。
穂希は最初とはまるで別人だ。かつての彼は、暗く、誰も彼も拒絶していた。
いまや、こんなに明るく彼女と笑っている。自分のいないところで。
コスモはぎゅっと唇をかみしめる。
「用事を思い出したから帰る」
「来たばっかりなのに」
一鈴が驚いてコスモに声をかける。
「また今度」
コスモは言い捨てて、家を出た。
「どうしてこうなったんだ」
カラスが、ぎゃあ、と鳴きながら飛んでいく。
「このままじゃダメだ……」
つぶやきは風に紛れ、溶けて行った。