私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
「使用人に恋をしたんですって。むこうは自分のことはなんとも思ってないってわかってるって。だからつらいんですって」
「片想いですか」

「バレンタインにチョコを渡してもただの労いとしか思われなくて。一緒に贈った腕時計は毎日つけてますけど、主人への義理なんですって。ホワイトデーには自分から指定してブレ……アクセサリーを買ってもらって」
 それであれだけ取り乱したのか、と一鈴は納得した。小さな金のハートに想いを託して、それでも気付いてもらえなくて。

「報われないって、確定なんですか?」
 一鈴はたずねる。
「相手は使用人よ?」
「今の時代、関係なくないです?」
「あるわよ」
「最悪、かけおちとか」
「なんで悪い方を選ばないといけませんの」
「たしかに」

「かけおちなんてしたら、小幡は誘拐犯として指名手配されます。お父様はそういう方なのですよ」
 名前出しちゃってるよ。
 思ったけど、さすがにつっこめなかった。

「じゃあ、ほかの会社で働いてもらうとか」
 漠然と答える。
 が、佳乃のカンに障ったようだった。
「それっきり会えなくなったらどうしてくれますの」
「愛があればなんとか」
「自分が愛されてるからって」
 佳乃が一鈴をねめつける。
 はは、と強引に笑う。形としては、御曹司に見初められたことになっている。

「きっとなんとかなりますって」
「適当すぎませんこと!?」
 佳乃が声を荒げた。適当なのはその通りなので反論できない。
「私がどんな思いで、あの方を」
 直後。
 ばん! とドアが乱暴に開けられた。
「お嬢様!」
 小幡が乱入して佳乃に駆け寄る。
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