私はお守りじゃありません! ~現代の大奥で婚約バトル!? 呪われた御曹司が「君は俺のお守りだ」と甘えてきます~
 穂希はくすくす笑う。
「初めて会ったときもお腹の虫が鳴いていたな」
「人間ですから」
「レストランも併設だな。行くか?」
 穂希に手を差しだされ、手をとる。
 それから、はっとした。なにを当たり前のように手をつないだんだ、自分は。
 今さら振り払えなくて、平静を装って歩いた。
 彼は平然としていて、腹立たしかった。



 レストランは簡素な作りで、注文は券売機だった。
 メニューには溶岩からあげに並んで溶岩カレーがあった。
「お昼、ここにしましょう!」
 穂希は苦笑して了承した。
 一鈴は溶岩カレーと溶岩からあげのセットを頼み、穂希はとんかつ定食を頼んだ。
 大きな窓からは青空と富士山がくっきり見えた。

 とんかつ定食とともに真っ黒のカレーと真っ黒の唐揚げが届き、一鈴は顔を輝かせた。
「写真通りに真っ黒だな」
「からあげ、一つ食べてみます?」
「食べさせて」
「甘えないでください」
 一鈴はからあげを一つ、とんかつの横に置いた。
 穂希は苦笑した。
 食後に富士山ソフトも食べて、一鈴は大満足だった。

 昼食を終えると、穂希は静岡側の五合目に車を走らせた。
 途中で霧が出始めて、ライトをつけて速度をゆるめる。
「こんな霧、初めて!」
「ドライバーとしては怖いんだけどな」
 窓にはりつく一鈴に、穂希は苦笑する。
 くねくねした道を上がり、五合目の駐車場に止まった。平日のせいか車は少なく、ひと気はなかった。
 そこもまた霧に包まれていた。風で常に流れ、グレーの濃淡を繰り返している。
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