ゾンビ化した総長に溺愛されて始まる秘密の同居生活

　部屋には私だけになってしまった。窓の無い部屋は眩しいくらい照明がなされてある。

「……どうしたら」

　いつの間にか着ている服も変わっていた。水色の作務衣みたいな寝間着に変わっている。
　すると強烈な眠気が襲いかかって来た。

（これ、麻酔……？）

　おそらく私と勇人を桜風医療研究所に連れて行く際に麻酔をかけたのだろう。それだと気が付かなかった事にも説明が付く。

（眠い……）

　私は眠気には勝てず、また目を閉じてしまった。
　そしてまた目が覚める。どれくらい眠ったのか正直分からない。

（多賀野くん……無事かな）

　すると、部屋の扉がガチャリと開かれる音がした。扉の向こうからは白い防護服を着た女性がピンク色のトレーに乗った食事を両手に持ち、こちらへとゆっくり歩いてくる。

「田中さん、お食事です」
「ありがとうございます。……多賀野くんはどうしていますか？」
「元気にしていますよ」
「嘘だ」

　彼女の元気にしていますよ。という言葉が全く飲み込められなかった。嘘としか捉えられない。
　それに彼は私の血を吸っていたが、ここに来てからは食事はどうしているのかという疑問も合わせて湧いて出てくる。

「多賀野くん、私の血を吸っていたんです。食事はどうしているんですか？」