冷徹な総長様がただの幹部(私)を溺愛してくる
豹牙さんは私のすることを決して止めなかったのだ。
それがどんな愚策であれ、「とりあえずやってみろ」と背中を押してくださる。
これは豹牙さんの人への無関心さの現れだが、私にはそれが心地よかった。
その奥には私への期待が込められていることを知っていたから。
──ずっとここにいたいな。
いつしかそんな想いが胸に膨らみ、豹牙さんの役に立つだけではなく、隣に立ちたいと強く思うようになった。
きっとこれが義務感が消失した瞬間だ。
そして【黎明】結成の日──私は幹部に任命された。
当然反発はあったが、実力行使したら丸く収まった。
豹牙さんは肩を震わせて笑ってたし、裕次郎さんは嬉々として動画を撮り、浬と賢人は笑い転げていた。
その様が「そこまでやる必要があるのか」と戦慄する構成員たちを一蹴しているようで痛快で、
この人たちとならどこまでも行けるんじゃないか、と淡い希望を抱いた。
──だが、情報だけでは肝心な時に誰も守れないと、【堕天】との初戦で学んだ。
だから情報を集めつつ豹牙さんに戦い方を教わることにした。