蜜月溺愛心中
異性と手を繋ぐなど初めてのことで、椿の心拍数が上がっていく。しかも相手が自分とは別世界に生きているような人のため、さらに緊張が増していく。

(私、清貴さんの隣を歩くのにきっと相応わしくないよね……)

今の椿は、伸び放題の長い黒髪にグレーのトップスとデニムパンツという地味な格好であり、華やかな色合いのシャツを着こなしている清貴の隣に立つのが恥ずかしくなってしまう。

(でも、私には自由に使えるお金がないし……)

夜に近い時間帯のためか、駐車場に向かう二人とすれ違う人は誰もいない。そのことだけが椿を安堵させていた。

「これが俺の車だ。乗ってくれ」

職員用駐車場に止められていた一台の車の前で清貴は立ち止まる。椿はその車を見て、さらに緊張が増してしまった。車の車種に椿は詳しくないためわからないのだが、目の前にある真っ白な大きな車は高級車だと雰囲気でわかってしまったからである。

「シ、失礼シマス……!」

緊張のし過ぎで、椿の口から飛び出す言葉は、日本語が不慣れな海外の人のようにカタコトになってしまう。そんな椿を見て清貴はクスリと笑った。
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