蜜月溺愛心中
泣きながら訴える姫乃に対し、清貴は冷たい目を向けつつもどこか焦ったような声で言う。椿は、姫乃の言葉がグルグルと頭を回っていた。

(二人は付き合ってたの?ホテルに行ってそういうこともしていたの?清貴さんは、本当は姫乃さんのことが好きなの?)

モヤモヤとした気持ちはどんどん大きくなっていく。そして、風船のように膨らんだその気持ちは大きな音を立てて破裂した。

「椿ちゃん……!!」

蘭と菜月に声をかけられ、椿は初めて泣いていることに気付いた。泣いていると自覚してしまうと、溢れてくる悲しみを止めることができなくなっていく。涙はどんどん溢れ、床に零れ落ちていった。

「椿……!おい、さっさと離せ!」

清貴が姫乃のしがみ付いている腕を乱暴に動かす。姫乃は、「嫌よ!絶対に離さないから!」と言いながら椿を睨み付けた。

「地味なブスのくせに、清貴くんと結婚ですって?ふざけんじゃないわよ!!私はずっと清貴くんが好きで、清貴くんのために自分磨きを頑張ってきたのよ?それなのに、こんな女に取られるなんて納得いかない!」

「ッ!」
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