🆕僕に依存してほしい。【ピュアBL】
 ご飯を食べ終わると、部屋に戻った。

「歩夢くん、ちょっと休憩したら温泉に行く?」
「そうだね。怜くんは?」
「俺は――」

 歩夢とあいつは少し休んでから、部屋に置いてあった浴衣やタオルの準備を始める。そしてふたりで温泉に行った。俺はあいつらと一緒に行っても、自分だけ浮いて虚しくなる予感しかしなくて。聞かれたけど「さっき入ったから、俺は行かないわ」って答えた。歩夢と旅行に来て一緒に温泉に入らなかったのはこれが初めてだ。

 俺らがご飯を食べている時にホテルの人が引いてくれた布団。そこにごろんとしながら、歩夢とあいつのことについて考えていた。

――歩夢が完全に離れていったら俺、生きていけるのかな。

 今頭に浮かんだ言葉は大げさかもしれない。生きていけるとは思う。だけど歩夢がそばにいないことを想像したら、心が本当に痛い。

 目を閉じているとふかふかな枕と布団が気持ちよくて眠りそうになった。ちょうどそのタイミングでドアが開く音と、歩夢たちの声がしたから目を開けて、布団の上に座った。

「歩夢くん、部屋で休んでて?」
「うん、迷惑かけてごめんね」
「大丈夫だよ、歩夢くん。迷惑じゃないから」

 あいつが消え、歩夢だけが部屋に入ってきた。歩夢はふらついていた。

「歩夢、どうした?」

「温泉に長く入りすぎちゃって、のぼせちゃったみたい」
「大丈夫か?」
「うん、大丈夫」
「水飲むか?」

 布団を引くため奥に追いやられたテーブルの上には、出しっぱなしの水のペットボトルがあった。歩夢が布団の上に座り、俺は水をコップに入れようとして立ち上がる。

「あ、今ね、悠生くんが冷たいお茶を買って、氷も持ってきてくれるって」
「……そうなんだ」

 悠生くん、悠生くん、悠生くん……。
 あれもこれも悠生くん。

「歩夢は、俺がいなくても生きていけそうだな」
「……怜くん、何を言っているの?」

 〝俺がいなくても生きていけそう〟

自分で言ったその言葉はあっという間に尖っていき、自分の深い部分に突き刺さってきた。

 歩夢の質問には答えられなくて、今の表情を歩夢に見せたくなくて。俺は歩夢に背を向けた。


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