惑わし総長の甘美な香りに溺れて
啼勾会
 SudRosaの人たちと一緒に例の施設へ向かていると視線が痛かった。


「マジで髪桃色だ……」

「本当にいたのか、薔薇姫って」


 前、陽の彼女としてお披露目されたときよりも注目されている気がする。


「てかさ、あんまよく見えなかったからわからなかったけど、結構かわいい顔してねぇか?」

「だよな? やべぇ、俺こないだ芋くさいとか言っちまった」


 前に失礼なことを言っていた人の声も聞こえてきて、そこの認識は改めてもらえたようで良かったと思う。


「でもまさか陽の義姉が薔薇姫だったとか……どんな偶然だよ」


 まだ驚きが覚めやらない様子で呟く笙さんに、私は「そうですよね」と頷いた。


「本当に不思議……でも、縁ってそういうものだって聞いたことあります」

「縁?」

「一度結ばれた縁は、離れたとしてもまた交わるものだって」


 だから私は、預かったSをずっと持っていたのかもしれない。

 いつか、ちゃんと返せる日が来るかもしれないって思って。


「……まあ、流石に二年前に一度会っただけの人が義弟になるなんて驚きですけど」


 なんて苦笑していると、丁度施設に着いた。
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