惑わし総長の甘美な香りに溺れて
 話しながら歩いて、少しは緊張も治まったと思う。

 でも早く陽を助けたいって思いはあるから、焦りがあるのは変わらない。


「会長は来てるみたいだけど、手下はそんなに連れてきてないみたいだ。手下連中は数で抑えとけ。俺はこの子と突入する」


 笙さんの指示を受け、みんなはピリッと緊迫した雰囲気を醸し出す。


「行くぞ」


 その一言で、私たちは施設内へと突入した。


「なんだお前ら!」

「刃向かうつもりか!?」


 スーツ姿の屈強な男たちをSudRosaの人たちが人数任せで抑え込んでいく。

 私はその間を縫って先に進む笙さんの背中を必死に追った。

 どんどん施設の奥へと進んで行き、目的地の入り口にいた啼勾会の男も抑え込む。


「このっ! 笙! お前なにしてる!?」


 数人にのし掛かられて動けずにいる啼勾会の男は、笙さんを非難した。

 けれど笙さんは存在ごと無視し、入り口に備えついているパネルを操作する。

 カメラがありそうな部分に顔を向け、ピピッと認証完了の音が鳴った。


「お前ら頼んだぞ! あんたは来い!」

「はい!」


 入り口が開き始め、男を抑え込んでいるSudRosaのメンバーに声を掛けた笙さんは私にも指示を出しすぐに走り出した。
< 138 / 157 >

この作品をシェア

pagetop