惑わし総長の甘美な香りに溺れて
「すげぇな、軸もブレてないし完璧。なあ藤沼、お前の義弟サッカー部に入らねぇ?」


 少し興奮した様子の加藤くんは陽をサッカー部に勧誘してくる。

 そういえば加藤くんもサッカー部だったっけ。

 でも、陽サッカー部入るかなぁ?


「んー、一応聞くだけ聞いてみるよ」

「おう、頼むぜ」


 私の曖昧な返事にも笑顔で返してくれた加藤くん。

 そんな彼に今度は廊下の方から声がかかった。


「久斗ー」

「お? お前ら今日は早ぇんだな?」


 派手な髪色ばかりの男子たち。

 この学校は髪色に関してはあまり厳しくないけれど、彼らは髪だけじゃなくピアスもたくさん付けていて明らかにガラが悪い。


「悪い景子、あいつらと話があるんだ」

「うん……じゃあまた後でね」


 離れていく加藤くんを見送る景子は笑顔だ。

 でも、幼なじみの私には分かる。これ、絶対無理してるときの顔だ。
< 8 / 157 >

この作品をシェア

pagetop