KISSでチェンジ!
お弁当を作ってくれている母親には申し訳ないけれど、体調が悪かったということにしておこう。
「どうした? 腹でも痛いのか?」

 田中は純の隣に座り込んで菓子パンの袋をあけた。
ご飯に甘いものをチョイスするのは純としてはちょっと理解できないことだ。

 だけど運動部の田中はとにかく甘いものが欲しくなるのだと、以前も言っていた。
「腹は痛くないけど、あまりよくない感じだな」

 この調子じゃ良明とはいつまで立っても顔を合わせられない。
それは純にとっても死活問題だった。

女に戻ったときにキスできる相手がいないということなのだから。
「そっか。腹痛なら薬でどうにかなるけど、そんな感じでもないんだな?」

 田中はパックのいちごみるくにストローを突き刺して吸い込んだ。
 甘いパンに甘いジュース。

見ているだけで純は胸焼けがしてしまいそうだった。
「そうだな。薬は効果がなさそうだ」

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