KISSでチェンジ!
なんて考えたりもしたけれど、やっぱり自分に恋はまだまだ先の話みたいだ。
 それは少しさみしいようで、でも安心するような、そんな複雑な心境だ。

 ボンヤリと便器に座って時間を潰しているとノック音が聞こえてきた。
 やべっ。誰か使うのかな。

 多目的トイレは足を怪我したり、少しだけ体が不自由な生徒などが使う場所になっている。
 いつまでも純が独占しているわけにはいかなかった。

「今、出ます」
できるだけ女子のような声を出し、トイレの水を流す音を響かせてから鍵を開けた。

「純」
目の前に立っている良明に一瞬目を丸くして、それから「なんでここにいるんだ?」と聞いた。

「純が走っていくのが見えたから、追いかけてきた」
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