KISSでチェンジ!
帰ってこない
良明は今頃女子生徒に告白されているのか……。
 帰宅して宿題を始めてみてもそんなことばかりが脳裏をよぎってなかなか集中できない。

頭の中で勝手に想像している女の子が何度も出てきて微笑みかけてくる。
その子は良明にではなくて、純に向けて告白してくれるのだ。

 脳内で大暴走を初めて口角がニヤリと歪んだとき、部屋にノック音が聞こえてきて表情を引き締めた。
「純、ちょっといい?」

 白いエプロン姿の母親がひょこり顔を覗かせて、頭の中の少女は簡単にかき消されてしまった。
「なに?」

「晩ごはんに使う卵が足りなくなっちゃったの。買ってきてくれない?」
「そんなの、自分で行けばいいじゃん」

 こっちは学校に行って、宿題までしているんだと全身でアピールする。
が、そんなことで簡単に引き下がってくれる母親ではなかった。
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