不倫日和~その先にあるもの……それは溺愛でした。

 呆ける私を見つめながら、京子さんは涙を浮かべると、ゆっくりと話し出した。

「あの人、紫門からあなたのことは聞いていたのよ。可愛いお友達が出来た。不倫しようと思うんだよって」

「紫門さんは奥様に私の事を話されていたんですね」

「ええ、毎日毎日楽しそうに、あなたの話をしてくれたのよ。あの人が余命より長く生きられたのは、あなたのおかげなの。ありがとう。あの人は最後まであなたの心配をしていたわ。だからこれからは私が守っていきたいのよ」

 優しい笑みを浮かべながら、そう京子さんが言った。その顔は蒼紫さんより社長に似ていた。

「あの……奥様……」

「あら嫌だ。奥様だなんて、お母さんでも良いのよ」

「お母様……?いえ、あの……」

 私知っているのよ。と言いながら嬉しそうに笑った紫門さんの奥様。そんな紫門さんの奥様を見ながら私が焦っていると、奥様は楽しそうに片目を瞑り、ウィンクをしてきた。

「仕方ないわね。それなら京子さんでいいわ」

「はい。京子さん」

「それでは、あの人の話をしましょうか」

 それから私達は紫門さんとの思い出を語り、楽しい時間を過ごした。




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