【受賞作】命がけの身代わり婚~決死の覚悟で嫁ぎます~
 戻ってきたサイラスは皇后とミシュロがいなくなったクリスタル宮に居を構えている。
 本来ならスヴァンテもそちらへ移って仕えていくことになるが、サイラスと入れ替わって妻を娶ったのは事実だ。
 そんな自分が皇帝の目に触れる王宮内をうろつくのは触りがあるだろうと考えていた。
 ましてフィオラはカリナの替え玉。それを皇帝に隠したままというのも気が引けた。

「これからどうされるのですか?」

 スヴァンテの腕の中でフィオラがやわらかい声音で尋ねる。

「隣国との貿易をおこなう会社を作ろうと思う」

 商売の経験はないはずだけれど、聡明なスヴァンテなら会社を興しても成功しそうだとフィオラはうなずいた。

「君の実家のハチミツは相当うまいからな。洒落た瓶に詰めて隣国に輸出すれば高値が付くだろう」
「う、うちのハチミツを?!」
「ふたりで住めそうな屋敷を用意した。隣の土地も購入したからそこに会社を建てればいい。実家に近い場所だからこれからはいつでも顔を見せに行けるぞ?」

 フィオラが荷物の整理をしているあいだ、スヴァンテがなにか忙しそうにしているのは知っていた。
 サイラスが戻ってきたのでやることがたくさんできたのだろうと思っていたが、まさかこのような手はずを整えていたとは。
 
「次の屋敷は残念ながらここより狭い」

 スヴァンテがおどけた表情で冗談を口にした。ここは別邸と言えども皇帝が所有する宮殿なので比べるほうがおかしい。
 
「でもふたりで住むには十分だ。何人か住み込みの使用人も雇える。サイラス様が過分な退職金をくださった」
「スヴァンテ様……」
「だから、俺と死ぬまで一緒にいてくれないか?」

 コツンと互いの額同士が触れ合い、その瞬間、フィオラの瞳からポロポロと大粒の涙がこぼれ落ちた。

「私は平民の身です。貴族であるスヴァンテ様にはふさわしくないかと……」
「貴族と平民が結婚してはいけない法律はない」

 フィオラは二日前にシビーユとした話を思い出した。
 あのとき、身分差を乗り越えて幸せを掴んだカリナを心の中で誰よりも祝福していたのは自分だった、と。

「君のご家族に改めて挨拶に伺おう。俺を紹介してくれ。君の夫になる男だと」

 スヴァンテはフィオラの涙をぬぐい、そのまま両手で頬を包んで唇を奪った。

「心から愛している、フィオラ」


 運命の糸が複雑に絡み合い、出会ったふたり。
 身代わりを引き受けなかったら、出会うことすらなかった。

 これからは本当の自分に戻り、どんなときもふたりで幸せに――――


――――END.
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