僕の秘書に、極上の愛を捧げます
「そんなことは・・ありませんけど・・」

曖昧な答えではあるものの、拒否されているわけではない。
俺は椅子から立ち上がり "おいでおいで" と手招きした。

彼女が、ゆっくりと近づいてくる。

俺は、デスクの前で立ち止まった彼女の後ろに回り包み込むように抱きしめた。


「・・っ!」


彼女が息を飲み込む。

俺も平静を装っているものの、どんどん鼓動が速くなる。
そして、もうひとつの鼓動も同じように高鳴っているように感じた。

俺は、彼女が拒否反応を示さないのを確かめ、もう少しだけ腕に力を込める。

「どう?」

耳の後ろから、囁くように尋ねた。

「どう・・と、言われましても・・」

「宮田さんが疲れているのは、元を辿れば僕が原因。だったら、僕がリクエストに応えるのは当然だと思うけど」

後ろから抱きしめていることもあって、彼女の表情は分からない。
ふたりの鼓動と息づかいだけが、夜の静かなオフィスに響く。


「あの・・もう、大丈夫ですから」

そう言うと、彼女は俺の腕から抜け出し、こちらを振り返ることなく役員室を出て行った。


「はぁ・・っ」

大きく息を吐き出し、余韻に浸る。

どうにも表現できない。
嬉しいような苦しいような、なんとも言えない思いが頭の中をグルグルと回っていた。

ただ、はっきりと分かったことがある。

俺は、彼女をもっともっと知りたいと思った。
部下として、秘書としてではなく、ひとりの女性としての彼女を、もっと・・。

それくらい、彼女を抱き締めた時の胸の高鳴りに、自分でも驚いた。



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