僕の秘書に、極上の愛を捧げます
ジョン・F・ケネディ国際空港の到着ロビーに向かい、掲示板を確認する。

到着して間もないからか、ゲートから出てくる人がほとんど人がいないところを見ると、まだ手続き中なのだろう。

「間に合ったか・・」

思いの外CEOと話し込んでしまい、面会時間目一杯まで病室にいたこともあって、看護師に『疲れさせてはダメ』と注意されたほどだ。

バラバラと、ゲートからスーツケースを引いた搭乗客が出てくる。
彼女は・・翔子は・・まだ出てきていないだろうか・・。

あ、いた!

彼女も俺に気づいたのか、立ち止まって大きく目を見開く。
迎えをやるとは伝えていたものの、まさか俺自身が来るとは考えていなかったのだろう。

「うそ・・恭介さん・・?」

複雑な表情の彼女に近づいていく。

どんどん目が潤んでいく彼女を、人目のない通路脇に引き寄せて抱き締めた。
ぎゅうっ、と音が聞こえそうなくらいに強く。

「翔子、来てくれてありがとう。待ってたよ」

「・・・・はい」

ポンポンと彼女の背中を撫でながら、小声で伝える。

「しばらくは・・お互いの部屋にいるとき以外は、上司と部下として振る舞ってほしい。事情があって、俺の近くには情報屋が張り付いているんだ。頼んだよ」

小さく頷いて、彼女は顔を上げた。
いつもの・・俺の秘書をしている時の表情だ。

「じゃあ、行こうか」

ひと気の少ない通路を通り、空港の外に出る。
手配していた車に彼女と乗り込み、ダウンタウンのホテルに向かう。

彼女には、俺が宿泊している部屋のひとつ下の階に1室取っていて、スタッフ用の通路から直接俺の部屋に来れるようになっていた。

荷物を置いたらすぐに来るように伝え、彼女を待つ。

コンコンコン。
ドアをノックする音が聞こえて、俺は部屋のドアを開けた。



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