僕の秘書に、極上の愛を捧げます
「どうぞ、入って」

バタン・・。

俺の後ろで部屋のドアが閉まる音を聞くと同時に、先に部屋に入れた彼女の腕を引き、こちらを向かせて抱き締める。

「翔子・・寂しい思いをさせてすまなかった。本当にごめん」

少しの間、沈黙が流れる。
そして、俺の腕の中で顔を上げることなく彼女が呟いた。

「・・私・・遠藤さんとご飯に行って・・・・今なら・・幸せにできるって言われて・・」

「・・そうか」

「恭介さんとのこと、苦しくて・・・・。気持ちが揺れてしまって」

「うん・・・・」

それ以外、何も言えなかった。
手遅れ・・だったとしても、もう遠藤と何かあったとしても、彼女のことは責められない。

「だけど、会議室のモニタで恭介さんを見て・・・・。ひとりで無理してたんだなって、助けてあげられたら・・って思って」

「それは・・アシスタントとして・・・・だよね?」

確かめずにいられなかった。

何も関わりの無い彼女に害が及ばないよう、ある程度の距離を置かなければ、今回の件ですぐに情報屋が彼女を嗅ぎつけて張り付いてしまっただろう。

俺がそばにいられない状況で、怖い思いをさせたくなかった。
だから、プライベートの連絡を全て絶った。

だから・・。

たとえ俺の腕の中から出て行ってしまっても、それは仕方のないこと。
彼女は、悪くない。
何も伝えられずにいた、俺のせいなのだから。

俺は腕をほどき、彼女を解放した。

「業務命令だなんて、言わなければ良かったな。そしたら、断る自由だってあったのに。俺の都合ばかりで嫌な思いをさせて・・本当に申し訳ない」

彼女は首を横に振る。

「私を必要としてくれて、嬉しかったです」

「でもそれは───」

「嬉しかったんです。たとえ、上司と部下の関係に戻るのだとしても・・。それでも、恭介さんが仕事のパートナーとして呼んでくれたのは嬉しかった」

そう言って、彼女はやわらかく微笑んだ。



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